サルコイドーシスの診断基準

(厚生省特定疾患肉芽腫性肺疾患調査研究班1988)

----------------------------------------------------------------------------

主要事項

1) 臨床症状

 呼吸器症状(咳・息切れ),眼症状(霧視),皮膚症状(丘疹)など

2) 臨床所見

  a.胸郭内病変

   ①胸部X線・CT所見 (両側肺門リンパ節腫張,びまん性陰影,血管

               ・胸膜の変化など)

   ②肺機能所見 (VC・DLCO・PaO2の低下)

   ③気管支鏡所見 (粘膜下血管の network formation,結節など)

   ④気管支肺胞洗浄所見*1(総細胞数・リンパ球の増加・OKT4/8上昇)

   ⑤胸腔鏡所見 (結節,肥厚,胸水など)

  b.胸郭外病変

   ①眼病変*2 (前部ぶどう膜炎,隅角結節,網膜血管周囲炎など)

   ②皮膚病変 (結節,局面,びまん性浸潤,皮下結節,瘢痕浸潤)

   ③表在リンパ節病変 (無痛性腫張)

   ④心病変*3 (伝導障害,期外収縮,心筋障害など)

   ⑤唾液腺病変 (耳下腺腫張,角結膜乾燥,涙腺病変など)

   ⑥神経系病変 (脳神経,中枢神経障害など)

   ⑦肝病変 (黄疸,肝機能異常,結節など)

   ⑧骨病変 (手足短骨の骨梁脱落など)

   ⑨脾病変 (腫張など)

   ⑩筋病変 (腫瘤,筋力低下,萎縮など)

   ⑪腎病変 (持続性蛋白尿,高カルシウム血症,結石など)

   ⑫胃病変 (胃壁肥厚,ポリープなど)

3) 検査所見

 ①ツベルクリン反応 陰性

 ②γ-グロブリン 上昇

 ③血清ACE 上昇

 ④血清リゾチーム 上昇

 ⑤67Ga集積像 陽性(リンパ節,肺など)

4) 病理組織学的所見

 類上皮細胞からなる乾酪性壊死を伴わない肉芽腫病変

 生検部位(リンパ節,肺,気管支壁,皮膚,肝,筋肉,心筋,結膜など)

 クベイム反応陽性*4

注*1 :気管支肺胞洗浄液所見については喫煙歴を考慮する。

 *2,3:眼・心サルコイドーシスについては別に診断の手引きを参考とする。

 *4 :クベイム反応も参考になる。

診断基準

 1 組織診断群(確実)  :2・3のいずれかの臨床・検査所見があり4が陽性

 2 臨床診断群(ほぼ確実):2のいずれかの臨床所見があり,3の①または②を

               含む3項目以上陽性

除外規定

 1 原因既知あるいは別の病態の疾患,たとえば悪性リンパ腫,結核,

   肺癌(癌性リンパ管症,ベリリウム肺,じん肺,過敏性肺炎など)

 2 異物,癌などによるサルコイド局所反応

----------------------------------------------------------------------------

厚生省保健医療局疾病対策課(監修):

難病の診断と治療の手引き,六法出版社,1990,p.77.

サルコイドーシスの治療の適応

(1) 活動性眼病変

(2) 心病変

(3) 中枢神経病変

(4) 肺病変

X線上,BHLのみで肺野病変のないもの,肺野病変があっても自覚症状や呼吸機能

障害のないものは,,6ヵ月経過を観察し,改善のないとき,または増悪するとき治

療を開始する。

谷本普一 東京慈恵会医科大学第4内科medicina vol.27 no.5 1990-5

厚生省特定疾患肉芽腫性肺疾患調査研究班

 肺門および縦隔リンパ節病変のみの症例はステロイド治療の対象ではない。胸部X

線上広汎な肺野病変があり,息切れまたは持続性の咳が認められる場合にはステロイ

ド治療を行う。X線上肺野病変があっても,息切れや持続性の咳が認められない場合

には,6ヵ月以上経過をみて悪化が認められた時にステロイドを使用する事もある。

ステロイドの投与量および投与法については症例ごとに異なり,一律には決めにくく,

また国際的にも一定の見解はないが,ほぼ以下の原則を認めるものが多い。

 初回投与量は連日投与でプレドニゾロン1日30mg相当とする。改善傾向がみら

れてから徐々に減量する。維持量1日15mg以下になると再燃をみることがあるの

で以後の減量には慎重を要する。このさいS-ACE値が減量の参考となる事がある。

減量または中止後再燃がみられた場合は増量または再投与を行う。全投与期間は1年

6ヵ月以上となることが多く,ときにはきわめて長期間の投与を要する例もある。

 ステロイドの副作用を防止するため,連日投与の代わりに隔日朝1回投与を行うこ

ともある。この場合は連日投与の2日分量をまとめて1回に与える。たとえばプレド

ニゾロン1日30mg連日投与に代わって60mgを投与する事となる。

 ステロイドは結核を悪化させるので,硬化性結核病変のある場合には,INHを併

用することもある。

眼病変

 眼サルコイドーシスの予後は一般に良好であり,早期より診断が確定して,適切な

管理が行われていれば失明することはない。治療には,前眼部病変には,ステロイド

の点眼・結膜下注射のほか,散瞳剤を併用する。ぶどう膜炎が激しく,網膜・硝子体

・視神経に著明な病変があり,局所療法に抵抗して改善がみられないときは,ステロ

イドの全身療法を併用する。このさい改善がみられれば経過観察して局所療法に切り

替える。初期ぶどう膜炎に伴う眼圧上昇は一時的なものが多く,また,薬物的にコン

トロールしやすいが,不幸にして改善がみられない場合は,ぶどう膜炎の鎮静を待っ

て手術を施行する。

心サルコイドーシス

 サルコイドーシスの死因としては心病変が最大のものである。心病変,とくに早期

の症例にはコルチコステロイドが有効であり,サルコイドーシスの経過中に房室ブロ

ック,脚ブロックなどの刺激伝導障害,ありは危険な心室性期外収縮(多原性・連拍

性・R on T現象),心室頻拍または細動などの刺激生成異常が出現した場合は,コ

ルチコステロイド治療を行う。また症例により,心臓ペースメーカーの埋め込み,抗

不整脈薬の使用やうっ血性心不全に対する治療の併用が大切である。

神経サルコイドーシス

 中枢神経病変の多くは慢性髄膜炎として現れる。症状としては脳圧亢進に基づく意

識障害・頭痛・痙攣などの全般症状と,麻痺をはじめとする各種巣症状がみられる。

また脳の好発部位である間脳病変に基づく視床下部・下垂体症状を示すこともまれで

はない。慢性髄膜炎の所見として内脳水腫もしばしば認められる。ステロイド治療は

必須であり,一般療法とともに長時間使用されることが多い。末梢神経病変は一般に

自然寛解が多いが,多発性末梢神経症状にはステロイド治療を行うこともある。

[ 一覧へ戻る ]