ウィリス動脈輪閉塞症診断の手引き

(厚生省特定疾患調査研究班,昭和61年3月31日改訂)

------------------------------------------------------------------------------

1.

1) イ) 発症年齢は各層にわたるが,若年者に多く,性別では女性に多い傾向がある。

  ロ) 症状および経過については,無症状(偶然発見)のものから,一過性のもの,

    および固定神経症状を呈するものなど軽重・多岐にわたる。

  ハ) 小児例では脳虚血症状を,成人例では頭蓋内出血症状を主体とするものが多

    い。

2) すなわち小児例では,片麻痺・単麻痺・知覚異常・不随意運動・頭痛・痙攣など

 が反復発作的に出現し,時に病側が左右交替して現れることがある。さらに知能低

 下や固定神経症状を呈するにいたるものもある。しかし,成人例のように出血発作

 をきたすことはまれである。

3) 成人例では小児例同様の症状を呈するものもあるが,多くは脳室内・クモ膜下,

 あるいは脳内出血で突然発症する。これらは多くは軽快し,あるいは固定神経症状

 を残すが,なかには重症となり死亡するものもある。

2.診断上,脳血管撮影は必須であり,少なくとも次の所見がある。

 1) 頭蓋内内頚動脈末端,前および中大脳動脈近位部に狭窄または閉塞がみられる。

 2) その附近に異常血管網が動脈相においてみられる。

 3) これらの所見が両側性にある。

3.原因となるような特別の基礎疾患や誘因(動脈硬化,髄膜炎,腫瘍,ダウン症候

 群,レックリングハウゼン病,外傷,放射線治療など)はない。

 

4.診断の参考となる病理学的所見

 1) 内頸動脈終末部を中心とする動脈の内膜肥厚とそれによる内腔狭窄ないし閉塞

   が通常両側性に認められる。時に肥厚内膜内に脂質沈着を伴うこともある。

 2) 前・中大脳動脈,後交通動脈などウイリス動脈輪を構成する諸動脈に,しばし

   ば内膜の線維性肥厚・内弾性板の屈曲・中膜の菲薄化を伴う種々の程度の狭窄

   ないし閉塞が認められる。

 3) ウイリス動脈輪を中心として多数の小血管(穿通枝および吻合枝)がみられる。

 4) しばしば軟膜内に小血管の網状集合がみられる。

------------------------------------------------------------------------------

【診断の基準】

1.に述べられている事項を参考として,下記のごとく分類する。なお脳血管撮影を

 行わず,剖検を行ったものについては4.を参考として別途に検討する。

A.確実例 2.のすべての条件および3.をみたすもの。

 小児例で一側に定型的所見があり,他側に2.の 1)または 2)に準ずる所見がある

 もの。

B.疑い例 2.3.のうち2.の 3)の条件のみをみたさないもの。

------------------------------------------------------------------------------

[ 一覧へ戻る ]