急性膵炎の重症度分類

重 症  臨床徴候および血液検査成績からは予後因子①が1項目でも陽性であれば重症と判定し,血液検査成績および画像所見からは予後因子②が2項目以上陽性のものを重症と判定する。

<臨床徴候の診断>

ショック :収縮期血圧が80mmHg以下および,80mmHg以上でもショック症状を

       認めるもの。

呼吸困難 :人工呼吸器を必要とするもの。

神経症状 :中枢神経症状で,意識障害(痛みにのみ反応以上のもの)を伴うもの。

重症感染症:白血球増多を伴う38℃以上の発熱に,血液培養陽性やエンドトキシンの証明。あるいは腹腔内膿瘍の認められるもの。

出血傾向 :消化管出血,腹腔内出血(Cullen徴候,Gray-Turner徴候を含む)。

       あるいはDICを認めるもの。
中等症 全身状態は比較的良好で,明らかな循環不全や重要臓器機能不全の徴候はみられない。臨床徴候の予後因子①はみられず,血液検査成績の予後因子①の検査値は異常値を示すも陽性とはならず,あるいは血液検査成績および画像所見から予後因子②が1項目のみ陽性のものを中等症と判定する。
軽 症  全身状態は良好で,予後因子①および②をいずれも認めず,血液検査成績も正常に近いものを軽症と判定する。

 

重症度判定の時期

 原則として入院48時間以内に行い,以後,経時的に検索して重症度を判定し経過を追

跡する。

厚生省特定疾患治療研究事業に用いられる重症急性膵炎の「診断の手引き」では,

重症急性膵炎臨床診断基準(表1)をみたすもので,上記の臨床徴候および血液検査

成績のうち①が1項目以上,あるいは,②が2項目以上陽性のものを重症症例とし

て給付対象としている。

 

表 急性膵炎重症度判定基準 (厚生省特定疾患難治性膵疾患調査研究班,1990)

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重症度判定の予後因子

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A.臨床徴候・ B.血液検査成績 ・ C.画像所見

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 ①ショック ・ ①B.E.≦-3mEq/l ・②Ca≦7.5mg/dl ・②Grade Ⅳ,Ⅴ

 ①呼吸困難 ・ ①Ht≦30% ・②FBS≧200mg/dl ・CT:別表参照

 ①神経症状 ・ (輸液後) ・②PaO2≦60mmHg ・US:CTの判定法

 ①重症感染症・ ①BUN≧40mg/dl ・ (room air)   ・ に準じて判定し

 ①出血傾向 ・ または ・②LDH≧700IU/l  ・ 参考資料とする。

・  Cr≧2.0mg/dl ・②TP≦6.0g/dl ・

・ ・②PT≧15秒 ・

・ ・②血小板≦10万 ・

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注:CRPは今後,検索を進めてもらう。T-Bil,GOTは原疾患を考慮して適宜利用する。

  また他の併存疾患(肝硬変など)をもつものでは慎重に判定する。

表 CT Grade分類 (厚生省特定疾患難治性膵疾患調査研究班,1990)

 

Grade 膵腫大* 膵実質内部不均一**

または液貯留
膵周辺への炎症の波及
(-) (-) (-)
限局性 (-) (-)
膵全体 限局性 あるいは 膵周辺のみ
程度は様々 膵全体 あるいは 膵周辺をこえる
程度は様々 膵全体 かつ   膵周辺や膵周辺をこえる

*:なお,膵腫大の定義は「膵頭部で1椎体以上,膵体尾部で2/3椎体以上を膵腫大」

  としたHaagaらの基準(Haaga JA,Alfidi RJ,Zelch MG,et al.:

  Computed tomography of the pancreas,Radiology 120:589-595,1976)

  を用いる。

**:enhanced CTで判定するのが望ましい。

Grade Ⅰ:膵に腫大や実質内部不均一を認めない。

Grade Ⅱ:膵は限局性の腫大を認めるが,実質内部は均一であり,膵周辺への炎症の

     波及を認めない。

Grade Ⅲ:膵は全体に腫大し,限局性の膵実質内部不均一を認めるか,あるいは膵周

     辺(腹腔内,前腎膀腔)にのみ炎症の波及や液貯留を認める。

Grade Ⅳ:膵の腫大の程度はさまざまで,膵全体に膵実質内部不均一を認めるか,

     あるいは膵周辺をこえて(胸腔,または左側の後腎膀腔)炎症の波及や液貯

     留を認める。

Grade Ⅴ:膵の腫大の程度はさまざまで,膵全体に膵実質内部不均一を認め,かつ膵

     周辺をこえて炎症の波及や液貯留を認める。

CTの施行時期:原則として入院48時間以内にCTをとって重症度を判定し,以後7日,14日などと臨床経過に合わせ経時的に施行するのが望ましい。

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