B型肝炎医療機関内感染対策ガイドライン(要約)(昭和62年3月 厚生省)

[患者への対策]

    HBウイルスの医療従事者への感染を予防する上で最も重要なことは,感染者

   の認知,すなわちその患者がHBs坑原陽性であることを知ることと,その感染

   経路との遮断とである。HBs坑原陽性者についてはさらにHBe坑原の有無に

   関しても検査が必要である。

    医療上の感染事故として最も多いのは,血液材料で汚染された注射針をつき刺

   すことによる経皮的な感染である。

   全国B型肝炎ウイルス感染事故件数

     (昭和51年4月〜54年3月)

 原   因 |件 数| %

注射針等刺傷 | 507| 75.7%

血液付着 | 66| 9.9

咬傷 | 12| 1.8

血液誤飲 | 11| 1.6

その他 | 44| 6.5

不明 | 30| 4.5

    したがって,注射,点滴,血液透析あるいは手術などの観血的処置に際しては,

   十分な注意が必要である。

    ・通常の注射針は1回限りの使い捨て(ディスポ)を用い,再使用を行わない。

    ・注射筒はガラス製であれば使用後直ちに 0.1 %次亜塩素酸ソーダを含む溶

     液につけ,手袋をして水道水で十分洗浄した後に滅菌する。

    ・血液による汚染の可能性がある場合はディスポの注射筒を用い,捨てる時に

     は感染源とならないよう注意する。

    ・血液透析に際しては,HBs坑原陽性者専用のダイアライザーおよびベッド

     は固定して使用する。血液透析をする場合を除いては患者がHBs坑原陽性

     であるからという理由だけで隔離する必要は全くない。

    ・使用ずみの針には慎重に再びキャップをかぶせ,耐水用のバッグにいれるか,

     あるいはフタ付きのガラス製の空ビンなどの中に入れ,焼却または加熱滅菌

     して捨てる。

 1.HBs坑原陽性患者への入院中の指導

    入院中のHBs坑原陽性患者に対して,血液の汚染があった時に,よく水洗す

   ること,またカミソリ,歯ブラシ,タオルなどは専用とするように注意する。

    以下の項目については,一般患者と特に区別する必要はない。

      (1) 行動制限:特に制限しない

      (2) 面 会:特に制限しない。ただし乳幼児感染等に対する抵抗力の弱い

          者と濃厚に接しないように指導する。

      (3) 入浴,理髪:特に制限しない。

      (4) 食器,飲料水:特に制限しない。

      (5) 排尿・排便後の処置:よく手を洗うよう指導する。

      (6) 本,雑誌,玩具:血液の汚染のない限り,特別な処置を必要としない。

          血液で汚染された時にはよく洗って消毒液で拭いておく。子供の

          玩具の共用は避けるようにする。

 2.HBs坑原陽性患者への退院後の指導

      (1) 出血時の注意:傷,皮膚炎あるいは鼻出血はできるだけ自分で手当を

          し,また手当を受ける場合には他人に血液が付かないように注意

          する。血液の付着物は密閉して破棄し(焼却が望ましい),破棄

          できないものは自分で十分に水洗する。

      (2) 日用品の専用:カミソリ,歯ブラシ,タオルなどは専用とする。

      (3) 供血の禁止:輸血のための供血をしないように注意する。

      (4) 乳幼児に接する時の注意:口移しに食物を与えないように指導する。

      (5) 月経時の注意:処置後に手指を流水で十分に水洗する。

      (6) 排尿・排便後の処置:手をよく水洗する。

      (7) 汚物等の処置:分泌物などの汚物は,直ちに便所に捨てるか,密閉し

          て破棄(焼却が望ましい)する。

      (8) 定期健診:医師の指示に基づき定期的に肝機能検査を受けるように指

          導する。

      (9) HBe坑原陽性者:その婚約者および生活を共にする家族で,HBs

          抗体陰性者についてはHBワクチンによる予防を考慮する。

[感染に関する事故時の対応]

    事故などによる感染に対しては,原則としてHBs坑原・抗体陰性者を対象と

   して高力価の抗HBs人免疫グロブリン(HBIG)およびHBワクチンの投与による

   B型肝炎の発症を防止する必要がある。

    HBIGは事故後できるだけ速やか(48時間以内)に投与する(注:可能な限り被

   汚染者のHBs坑原・抗体結果の判明後が望ましい)。

[消毒法]

   ・通常の手洗いは普通の石鹸を用いて流水でよく洗うことで十分である。

   ・機械,器具等の消毒は,使用後速やかに流水で十分に洗浄することである。

   ・消毒法として最も信頼性の高い方法は加熱滅菌である。

   ・薬物消毒は加熱滅菌のできない場合に用いる。

   ・加熱滅菌,薬物消毒のいずれも不可能な場合は,さらに丹念に流水により洗浄

    することにより,汚染したHBウイルスの感染性をより完全に除去することが

    でき,これがウイルスで汚染された場合の基本的な処置である。

 1.加熱滅菌

     流水により十分に洗浄したのち,一般の病原性菌の消毒法として用いられて

    いる次の方法により完全に滅菌される。

      (1) オートクレーブ消毒

      (2) 乾熱滅菌

      (3) 煮沸消毒(15分以上)

 2.薬物消毒

   ・HBウイルスに対しての疫学的検討から有効性が確認され,また最も広く用い

    られているものは塩素系消毒剤である。

   ・金属材料に対しては,塩素系消毒剤に腐食作用があるため,非塩素系消毒剤を

    用いる。

   ・消毒する対象物が蛋白質で覆われている場合には,蛋白質が凝固し薬物の効果

    が不十分となりやすいので,作用時間を長くすることが必要である。

   ・いずれにしても使用後速やかに十分に洗浄した後に,薬物消毒することが望ま

    しい。

     (1) 塩素系消毒剤

        次亜塩素酸剤

        有効塩素濃度:1,000ppm

        消毒時間:1時間

     (2) 非塩素系消毒剤

        2%グルタールアルデヒド液

        エチレンオキサイドガス

        ホルムアルデヒド(ホルマリン)ガス

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