HAM/TSP診断指針(1988年鹿児島WHO学術会議による)

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Ⅰ.臨床診断

  慢性痙性対麻痺の多彩な臨床像が初診時からそろっているとは限らず,発症初期の

  HAM/TSPでは単一の徴候または身体所見のみが認められることもある。

  A.年令ならびに性

    多くは弧発例で成人期発症。ときに家系内発症や小児期発症。女性に多い。

  B.発症様式

    通常緩徐な発症であるが,急激な発症のこともある。

  C.主要な神経学的症侯

    1.慢性痙性対麻痺,通常緩徐進行性。時に,はじめ進行した後に症状の停止

    する例あり。

    2.両下肢(特に近位部)の筋力低下。

    3.膀胱障害は通常初期症状。便秘は通常後期症状。インポテンツや性欲減退

    もまれではない。

    4.刺痛,ジンジン感,灼熱感などの様な感覚症状の方が他覚的身体所見より

    も優位。

    5.下肢に放散する下部腰痛が稀でない。

    6.振動覚はしばしば障害されるが,固有感覚より保たれる。

    7.下肢反射亢進,しばしば足クローヌスやバビンスキー徴候を伴う。

    8.上肢反射亢進,しばしばホフマン徴候やトレムナー徴候陽性,上肢脱力は

    認めないこともある。

    9.下顎反射の亢進例も存在。

  D.より出現頻度の少ない神経学的所見

    小脳症状,視神経萎縮,難聴,眼振,その他の脳神経障害,手指振戦,アキレ

    ス腱反射の減弱または消失。

    (痙攣,認識力障害,痴呆,意識障害はほとんどみられることはない)

  E.HAM/TSPに伴いうる他の神経学的症侯

    筋萎縮,筋束性攣縮(稀),多発筋炎,末梢神経障害,多発神経炎,脳神経炎,

    髄膜炎,脳症

  F.HAM/TSPに伴いうる系統的症侯

    肺胞炎,ぶどう膜炎,シェーグレン症侯群,関節障害,血管炎,魚鱗癬,クリ

    オグロブリン血症,単クローン性免疫グロブリン血症,成人T細胞性白血病

Ⅱ.実験室的診断

  1.HTLV-Ⅰ抗体または坑原が血清ならびに髄液に存在すること。

  2.髄液に軽度のリンパ球性細胞増加をみることがある。

  3.血液あるいは髄液中に核の分葉したリンパ球を認めることがある。

  4.脳脊髄液中に軽度から中等度の蛋白増加を認めることがある。

  5.可能なら血液あるいは脳脊髄液からのHTLV-Ⅰウイルスの分離。

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