神 経 性 食 思 不 振 症  

病 態:若い女性が,精神的要因のために拒食するもので,るいそうと無月経を主訴

    とする。

    患者の95%は女性で,無月経を伴うことが多い。

    好発年齢は12~25歳で,思春期に多い。診断基準は30歳以下。

    標準体重の-20%以上のやせが,3ヵ月以上続く。

    一般に患者は病識に乏しい。体重や体型に体するゆがんだ認識がある。

    行動は活動的であることが多く,病識がなく比較的活発な肉体的行動を伴う

    のが特徴である。

    隠れ食など食行動の異常を伴う。盗食,多食,不食,様々な病態を呈する。

    頻度としては,都市部に多い。

    

症 状:るいそう,無月経,過度に活動する傾向がある。

    うぶ毛の増加を認める。下垂体機能低下症との鑑別の一つである。恥毛・腋

    毛は正常であり,多毛はない。ときに頭髪の脱毛をみる。

    血圧低下,体温低下を認める。徐脈傾向を示し,安静時徐脈がみられる。

    便秘を伴うことが多い。下腿などに浮腫が出現しやすい。

    しばしば,体重を減らすため,下剤や利尿剤を乱用する。また,自己誘発性

    嘔吐をみることがある。

    ときに自殺企図を示す。

  神経性食思不振症(中核群)の診断基準                             

    ◎① 標準体重の-20%以上のやせ                                 

    ◎② ある時期にはじまり,3ヵ月以上持続                              

     ③ 発症年齢:30歳以下                                      

     ④ 女 性                                            

     ⑤ 無月経                                            

     ⑥ 食行動の異常(不食・多食・隠れ食い)                             

     ⑦ 体重に対するゆがんだ考え(やせ願望)                             

     ⑧ 活動性の亢進                                         

     ⑨ 病識が乏しい                                        

    ◎⑩ 除外規定(以下の疾患を除く)                                 

     A.やせ来す器質性疾患                                     

     B.精神分裂症,うつ病,単なる心因反応                             

                                                     

◎印を満たすものを広義の本症とする.                              

          1979                            

                                                     

検 査:下垂体前葉ホルモンの分泌は正常~高値であることが多い。

    血中成長ホルモンの上昇があり,GHの基準値は上昇する。しかし,ソマトメ

    ジンが低値のため,作用は発現されていない。

    LHの低下も認められる。一般に血中ゴナドトロピンは低いが,LH-RHテスト

    の反応はよい。

    TSHが遅延型の分泌反応を示すことが多く,TRHに対する反応は異常を示す。

    T3が低下し,血中reverseT3値の上昇があり,いわゆる飢餓状態である。

    ただし,甲状腺機能は正常である。

治 療:精神療法が治療の基本となる。他に,薬物療法としてクロルプロマジン,食

    事療法などがある。

    1.精神療法

         カウンセリングは,恋愛問題など,自己の葛藤となる問題点を見

        つけるため,思春期の患者ではとくに重要である。

         患者の話を傾聴し,受容的に対応し,よい治療者-患者関係を作

        る。

         行動療法,特にオペラント条件付け法が有効である。体重が増え

        れば,外泊を増やすなどの「報酬を患者に与える方法」をオペラン

        ト条件付けといい,それを中心として「行動療法」が有用とされて

        いる。

         また,その報酬を自分で決めさせることを「自己強化療法」とい

        う。

         心療内科的治療としては,認知療法,家族療法も有効である。体

        重や体型に対する過った認識を理解させる治療を認知療法といい,

        家族全体に対して行うのを家族療法という。

         他に芸術療法,箱庭療法も有効。

    2.薬物療法

        性格の硬い傾向があれば,クロールプロマジンを用いる。

        強迫傾向があれば,bromazepamを用いる。

        うつ状態があれば,amitryptyline(トリブタノール)を用いる。

        薬物療法として,食欲の増進にはsulpirido(ドグマチール)が有

        効である。

    3.食事療法

         食事療法は,1,000cal程度の小カロリーから始める。経口栄養剤

        の併用も有用である。

         極端な低栄養,電解質バランス異常があれば,中心静脈高カロリ

        ー輸液や経鼻栄養を患者とよく相談した上で行う。

         患者が「食べない」ことに関しては,反発や患者の依存心をなく

        すため,無関心を装うのがよい。

        

    極度な症状があれば,入院する必要がある。

             神経性食思不振症の入院の適応

| ① 30%以上のやせが3ヵ月以上続く ⑥ 激しい多食傾向 |

| ② 重篤な電解質異常       ⑦ 重篤なうつ状態 |

| ③ 極度の徐脈(40以下)      ⑧ 自殺企図 |

| ④ 低血圧(収縮期70mmHg以下)  ⑨ 明らかな精神病 |

| ⑤ 低体温(36℃以下)      ⑩ 悪い家庭環境 |

予 後:無月経を必発とし,体重増加後も回復が遅れる。月経発来は体重増加に遅れ

る。

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